猫背と呼吸

2013-06-05

皆さんは、「猫背姿勢の弊害」と聞いて、どんな事を思い浮かべるでしょうか。「首や肩がこりやすい」とか、「見た目の印象が悪い」などはすぐに出てくることでしょう。

しかし、もう一つこれら以上に重大な弊害があります。

それは、「呼吸」。つまり、「呼吸が小さくなる」ということです。

呼吸のしくみ

生まれてからこのかた片時も休まずに行なっている「呼吸」は、どんな仕組みで成り立っているのでしょうか?

言うまでもなく、呼吸は「肺」の拡張・収縮により、空気が入ったり出たりして行われます。拡張時に空気が入り(吸気)、収縮時に空気が出ます(呼気)。

意外に知られていないのは、「肺は自ら拡張したり収縮したりするのではない」ということ。(え、ご存知でした?私は解剖学で学ぶまで知りませんでした)

では「肺」の拡張・収縮はどうして行われるのか?

それは、「胸郭」の拡張・収縮に伴って行われています。肺と心臓をがっちり覆っている肋骨でできたカゴが「胸郭」です。胸郭の底には、おわんを逆さにしたような形で、「横隔膜」がペコッとふたをしています。

吸気時には、肋間筋等の働きで胸郭が広げられます。横隔膜は下方にグーッと下がります。その結果、胸郭内の圧力が下がって、肺が拡張し、同時に空気が入り込んできます。

呼気時には、反対に、胸郭は狭められ、横隔膜は上方に上がります。すると、胸郭内の圧力が上がるので、肺は収縮して空気が出て行きます。

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肋骨の動き

吸気時に胸郭が広がるといいましたが、このとき横から見ると、肋骨はバケツの柄のように持ち上がっています。

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肋骨の角度が変わっていることに注意してください。普段意識することはありませんが、肋骨は呼吸のたびにこのような動きをしています。自動送風にしたエアコンの吹き出し口に似ていますね。

猫背姿勢になると・・・

猫背姿勢になったとき、この肋骨の動きがどうなるか想像してみましょう。 当然ながら、吸気時に持ち上がる動きが阻害されます。まるでバケツの柄に重い石が乗っかっているかのようです。

ここで簡単な実験を。

  1. 椅子に座って両腕を伸ばして両手を組み、その手を両ももの間に深く下ろしてください。この姿勢で深呼吸をします。
  2. 次に、両腕を体側に自然に下ろし、背筋を伸ばして座ります。この姿勢で深呼吸してみます。

どちらが楽に呼吸できましたか?「2.」の姿勢のほうがとても楽だったと思います。1.はバケツの柄に重しが乗った状態、2.はそれを取り除いた状態、というわけです。

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呼吸が小さくなると・・・

猫背姿勢だと肋骨(胸郭)の動きが制限され、結果的に呼吸が窮屈になります。楽で大きな呼吸ができなくなり、いつの間にか小さい呼吸が習慣づきます。

小さな呼吸ですと、まず取り込む「酸素」の絶対量が少なくなります。全身で60兆個といわれる細胞のひとつひとつは、酸素によって元気づけられているわけですから、その酸素の量が減ることは体にダメージです。

また、胸郭の動きが制限される分、無理にでも胸郭を広げようとして、首の斜角筋などが酷使されます。文字通り肩で息をするような感じです。その結果、首や肩のこりがひどくなります。つまり、猫背で首・肩こりになるのは、筋肉が頭を支えようとするだけでなく、呼吸をしようと無理に頑張るからなのです。

大事な胸郭の柔軟性と姿勢

猫背姿勢の人は、体の前側(胸側)の筋肉や筋膜が縮んで伸びなくなっています。そして、本人は意識していなくても、知らず知らずのうちに苦しい呼吸となっているのです。

呼吸が止まれば誰でも死んでしまいますよね。つまり、呼吸は生命の源です。猫背姿勢を改善することは、この生命の源を整備することにつながります。「自分は猫背だから」とあきらめないで、しっかり意識して改善していきましょう。

次回は、猫背改善のための簡単なストレッチなどをご紹介します。

※蛇足ですが、私は常々、「呼吸と血流が健康のキモ」と言っています。酸素を取り込み、運搬する機能です。それぞれの土台となる臓器が「肺」と「心臓」で、これらを胸郭がしっかり守っているわけですね。それだけ見ても、呼吸と血流が体にとっていかに大事かわかります。

カテゴリー: 姿勢・体の歪み

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