おすすめ本・『その股関節痛、切らずに治せます!』

2014-09-01

『その股関節痛、切らずに治せます!』(矢野英雄/マキノ出版)

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著者の矢野英雄先生(富士温泉病院名誉院長)は、股関節痛に対し、手術をしない「保存療法」を中心に治療に当たっていることで知られています。

以前、この病院で入院したという方が当院にも来られたことがあります。独自の「ほぐしグッズ」を作っておられるなど、熱心な先生がおられるのだなと感じました。

矢野先生も、かつては手術中心だったといいます。

<股関節の手術は何百例と重ねましたし、現在の主流である股関節の手術や人工股関節の歩行研究に関しては、その先駆けだったという自負もあります。>(3頁)

しかし、2002年頃から手術の効果に疑問を感じ始め、<手術から保存療法へと、治療方針を少しずつ変えていき><2006年からは手術をしなくても治せます、と保存療法を積極的に勧めるようになりました。>(3頁)ということです。

<今の医療は、変形性股関節症の手術をしすぎです。(中略)
8割の変形性股関節症は、手術をしなくても普通の生活ができるようになると断言します。
股関節の傷んだ骨や軟骨は、年を取っても改善し再生します。>(4頁)

基本的にこの認識に基づいて書かれています。

「股関節らくらく日記」という記録をつけるメリットや、二本のポールを持って歩く「ノルディックウォーク」なども大きく紹介されています。

そのほかにも、

  • 変形と痛みが必ずしも直接関係するものではないこと
  • 「変形性股関節症は、加齢や生活環境によって心身に生じた、生活障害ととらえるべきだ」という考え方
  • 特に筋肉の疲労が関わっていること
  • 心の状態と痛みが関わっていること
  • スポーツなどを楽しんでいた活動的な人が多いこと
  • 水中ウォーキングなどの運動もやりすぎに注意すべきであること
  • 「やせなければ」という強迫観念もストレスとなって痛みを増加させること

などは、私の認識と一致しています。

手術については、手術後の破損やゆるみ、金属アレルギー、脱臼や骨損傷といった問題や、入院期間、費用対効果の問題、そして手術後に痛みが再発するケースもあることなどが、手術を積極的に勧めない理由のようです。

さらに、保存療法を続けるうちに痛みが落ち着いてきたり、軟骨や臼蓋(お屋根)が再生したりするケースがあることも、その大きな理由となっているようです。

本書では、手術技術などの進歩は認めているものの、たとえばMIS(最小侵襲手術)のような先端技術については、あまり考慮されていないように感じました。新しい方法だけに、術後の経過などについてのデータが不足しているということもあるでしょう。

また、「軟骨再生」ということがどれくらい確かに起きるのかもわかりにくいところです。いずれにせよ数年単位の長期の時間が必要となるのではないかと、私は考えます。

ちなみに当院の患者さんにも、手術をするつもりだったのに事情によりできなくなり、保存療法を続けているうちに「お屋根ができてきた」という変化が明らかになっている方がおられます。(こちらの記事参照

本書にもあるように、整形外科では「手術するか、しないか」の二者択一しか与えられない場合がしばしばで、途方に暮れている患者さんが多くおられます。「保存療法」という手術以外の対処法もいろいろあるということを知る意味でも、本書は一読の価値有りだと思います。

<「今より悪くなったら手術をするからもう一度いらっしゃい」
 このような医療従事者の言葉に、憤慨した変形性股関節症の患者さんも少なくありません。「悪くなりたくない」という患者さんのニーズに、医療従事者はどれだけ応えられているでしょうか。
 (中略)手術を望まない患者さんの選択肢は、「病院へ行かないこと」だけ。この状況は、患者さんにとっても、医療従事者にとっても、不幸だと思います。>(74頁)

 

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