医師の本音が興味深い、『医者が家族だけにはすすめないこと』

2014-11-17

『医者が家族だけにはすすめないこと』(北條元治/セブン&アイ出版)

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著者の北條元治医師は、「培養皮膚」を専門とする形成外科医です。個別な症状についての解説もたくさん盛り込まれていますが、私が本書を読んで面白かった点は、随所に記されている現役医師の“本音”でした。

著者は、<病院にかかると8割の人は得をするが、2割の人は損をする>と強調しています。

要するに、根拠(エビデンス)に基づいて有効とされる標準治療であっても、有効率が80%を超えていればかなり優秀な治療法といえ、裏を返せば、「2割の人には有効でなかった」ということだといいます。そして、こう続けます。

<だからこそ、医師のいうことをそのままに信じてはいけないのです。自分の体のことなのだから、どんな場合でも、自分の直感でもいいので、どこかにほんのちょっぴりでも、「医者のいうこと」よりも、「自分の生きかた」が最優先という気持ちを持ってほしいということなのです。>(35頁)

医師国家試験についての記述も興味深いものでした。超難関試験と思われているのは<「社会的刷り込み」であり、「幻想」>と言い切っています。私は本書を読むまで知りませんでしたが、医師国家試験の合格率が90%以上とは驚きです。

これはひとえに、医学部に投入された莫大な税金を無駄にしないためのようです。<医師は「90%以上が合格するようにデザインされた試験を通過した」にすぎない>とまで言っています。著者の言いたいのはこうです。

<だからこそ、「先生が、こういっていたから・・・・・」と、医師のいうことをそのまま信ずるのではなく、ご自身の生き方どおりの人生を歩んでいただきたいのです。>(48頁)

つまり、医者を過剰に崇め奉るのではなく、上手に利用しながら、自分らしい人生を送って欲しいということでしょう。

こう書くと、いかにもいま流行りの「医療否定本」かと思われそうですが、けっしてそうではありません。たとえば、がん治療についても、医療否定系にありがちな「がん放置療法」には<賛成できない。おすすめも絶対にできない>としています。バランスを配慮しながら書いてあることが伝わってきます。

ただ、読みながら、私は思わず考え込んでしまいました。本書でも、また、他の医師が書いた“医者本”でも、「この症状は実はこうだから、本当はこうするのがベター」とか、「この薬は、こういうところが本当は危険があるから、こういう飲み方がベター」といった書き方がよく出てきます。しかもその見解が、抗がん剤治療の是非論に顕著なように、医師によってかなりバラつきがあります。

そもそも、医者の言いなりにならないようにしようと思っても、個別症状や薬についての専門的な知識が乏しい一般人には、何がベターなのかを選ぶ選択肢さえ初めからありません。であれば、あれこれの本を出すのも悪くはないのだけど、まずは医師の所属する各学会などにおいて、ある程度統一された見解をしっかり出してもらった方が良いのではないかと思うのです。先進医療の研究ばかりではなく、現行の治療法を社会に向けて分かりやすく説明しようとする努力は成されているのだろうか、と思わざるを得ません。

おそらくはさまざまなしがらみで「統一」などは難しいのでしょう。だから、これだけ多くの“医者本”が出てくるのかもしれません。うーんと考え込んでしまったのは、そのためです。

カテゴリー: 書評
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